アクション映画や格闘技の試合で、空中に舞い上がりながら回転して相手を蹴り飛ばす、そんな華麗な技を見たことはありませんか?それが「飛び後ろ回し蹴り」です。テコンドーや空手などの武道で見られるこの技は、見た目のインパクトが絶大で、憧れる人も多い大技の一つです。
「自分には難しそう」「体が硬いから無理かも」と感じるかもしれませんが、体の使い方の仕組みを理解し、段階を踏んで練習すれば、誰でも習得への道が開けます。この技ができるようになれば、格闘技のスキルアップはもちろん、体のコントロール能力も大きく向上します。
この記事では、飛び後ろ回し蹴りの基本的なやり方から、カッコよく決めるためのコツ、そして効果的な練習方法までを丁寧に解説します。初心者の方でもイメージしやすいようにポイントを絞ってお伝えしますので、ぜひ最後まで読んで、練習の参考にしてみてください。
飛び後ろ回し蹴りとはどのような技か
まずは、飛び後ろ回し蹴りが具体的にどのような技なのか、その特徴や似ている技との違いについて整理していきましょう。技の構造を頭で理解することは、体をスムーズに動かすための第一歩です。
回転と跳躍を組み合わせた大技
飛び後ろ回し蹴りは、その名の通り「ジャンプ(飛び)」と「回転(後ろ回し)」の動作を同時に行いながら蹴りを放つ技です。英語では「Jumping Spinning Hook Kick」などと呼ばれ、海外でも非常に人気があります。
この技の最大の魅力は、回転によって生み出される遠心力と、ジャンプによる落下のエネルギーを蹴りに乗せられる点です。地上で蹴るよりも高い位置を狙いやすく、相手の死角から足が飛んでくるため、反応されにくいという実戦的なメリットもあります。また、演武やアクションのシーンでは、そのダイナミックな動きが観客を魅了する「花形」の技として扱われます。
通常の後ろ回し蹴りとの違い
似た名前の技に「後ろ回し蹴り」がありますが、これとの大きな違いは「軸足が地面についているかどうか」です。通常の後ろ回し蹴りは、片足を軸にして回転し、もう片方の足で蹴ります。安定感があり、カウンターとして使いやすいのが特徴です。
一方、飛び後ろ回し蹴りは、軸足ごと地面から離れて空中で回転します。そのため、通常の後ろ回し蹴りよりもバランスを取るのが難しく、高い身体能力が求められます。しかし、ジャンプすることで間合い(相手との距離)を一気に詰めたり、予期せぬタイミングで攻撃したりすることが可能になります。
「後ろ蹴り」との混同に注意
よく混同されがちなのが「後ろ蹴り(バックキック)」です。後ろ蹴りは、回転して相手に背中を向けた状態から、直線的に足を「突き刺す」ように蹴る技です。これは「直線的な動き」です。
対して、飛び後ろ回し蹴りは、足先で円を描くように横から「なぎ払う」動きをします。かかとや足の裏で相手の頭部や側面をフックするように打撃を与えるため、軌道が全く異なります。練習をする際は、自分が「突きたい(後ろ蹴り)」のか「払いたい(後ろ回し蹴り)」のかを明確に意識することが大切です。
飛び後ろ回し蹴りの基本的なやり方

ここでは、実際に技を出す際の手順を4つのステップに分けて解説します。いきなり速く動こうとせず、まずはゆっくりとした動作で動きの流れを確認してみてください。
【飛び後ろ回し蹴りの4ステップ】
1. 構えから踏み込みの準備をする
2. 上半身をリードさせて回転とジャンプを行う
3. 空中で膝を抱え込み、ターゲットへ足を振り抜く
4. 安全に着地して次の動作に備える
1. 構えから踏み込みの準備
まずはリラックスした状態で構えます。右足で蹴る場合を想定して説明しましょう。左足を前にした構え(オーソドックス)からスタートします。ターゲットをしっかりと見据え、全身の力を適度に抜いておくことが重要です。
技を出し始める直前、重心を少し落とし、ジャンプと回転のための「タメ」を作ります。この時、前の足(左足)に体重を乗せたり、あるいは後ろの足(右足)を少し前へステップさせたりして、回転の勢いをつける準備をします。この予備動作が大きすぎると相手にバレてしまうので、なるべくスムーズに行うのがポイントです。
2. 回転とジャンプの連動
ここが最も重要なパートです。まず、蹴る足(右足)とは反対の方向、つまり背中側へ向かって回転を始めます。この時、足だけで回ろうとするのではなく、肩と顔を先行させて回す意識を持ってください。
体が半回転して相手に背中が見え始めたタイミングで、地面を強く蹴ってジャンプします。ジャンプと同時に回転速度を上げますが、目線は素早く回転させて、再びターゲットを見るようにします。この「顔を残す・素早く振り返る」動作が、空中で迷子にならないための鍵となります。
3. 空中で足を振り抜く
ジャンプして体が空中に浮いている間に、蹴り足(右足)を操作します。ここで大切なのは、最初から足を伸ばしきらないことです。まずは膝をしっかりと折りたたみ、自分の体の方へ引き寄せておきます(抱え込み)。
ターゲットが近づいてきたら、抱え込んだ膝を一気に解放し、かかとで相手の側面を打ち抜くように足を伸ばします。ムチのように「しなる」軌道をイメージしましょう。足がターゲットを捉える瞬間、蹴り足の股関節をしっかり開くことで、可動域が広がり、綺麗なフォームになります。
4. 着地と残心
蹴り終わった後も気は抜けません。空中で蹴り抜いた勢いそのままに、体は回転を続けます。無理に止めようとせず、自然な流れで着地体制に入ります。
理想的な着地は、蹴り足(右足)が一周回って元の位置、もしくは少し前の位置に戻ってくることです。しかし、最初はバランスを崩しやすいので、まずは両足でふわりと降りることを意識しましょう。着地した瞬間に相手から目を逸らさず、すぐに次の攻撃や防御に移れる姿勢(残心)を作ることが、武道としての完成度を高めます。
綺麗に決めるための3つのコツ
形にはなったけれど、なんとなくカッコ悪い、威力が弱い、バランスが崩れる。そんな悩みを解決するために、特に意識すべき3つのポイントを紹介します。
目線(スポッティング)を絶対に外さない
回転技で最も多い失敗は、「自分がどこを向いているか分からなくなる」ことです。これを防ぐために必要なのが、ダンスやバレエでも使われる「スポッティング」という技術です。
回転する際、ギリギリまでターゲットを見続け、体が回り始めたら頭を素早く回して、体よりも先に再びターゲットを見ます。「ターゲットを見失う時間を極力短くする」ことで、脳が平衡感覚を保ちやすくなり、狙った場所に正確に蹴りを当てることができます。目が回ってしまう人は、この首の返しが遅いことが多いです。
膝の「抱え込み」がキレを生む
初心者の飛び後ろ回し蹴りが「棒立ちの回転」に見えてしまう原因は、蹴る足が最初から伸びていることにあります。足が伸びたまま回転すると、遠心力がかかりすぎて動作が遅くなり、相手にも簡単に避けられてしまいます。
フィギュアスケートの回転をイメージしてください。腕を縮めると回転が速くなりますよね。それと同じ原理で、蹴るまでは膝を体に密着させるくらい小さく折りたたみ、インパクトの瞬間にだけ「開放」します。これにより、鋭く速い蹴りが実現します。
上半身のひねりを活用する
足の筋肉だけで蹴ろうとすると、どうしても高さや威力に限界がきます。上手な人は、上半身、特に肩と腕の振りをうまく利用しています。
ジャンプして回転する際、両腕を回転方向へ鋭く振ることで、その勢いが下半身に伝わります。また、蹴る瞬間に上半身を少し後ろ(蹴る方向と逆)に倒すようにすると、カウンターウェイトの役割を果たし、足が高く上がりやすくなります。ただし、倒しすぎると着地で転倒するので、腹筋に力を入れて姿勢を制御することが大切です。
初心者におすすめの練習方法
いきなり空中で回るのは危険も伴います。段階を踏んで練習することで、怪我を防ぎながら効率よく上達することができます。
ステップ1:地上での回転練習
まずはジャンプをせずに、地面に立った状態で動きを確認します。これを「分解練習」と呼びます。
1. 構える
2. ゆっくり回って後ろを向く
3. 顔を返してターゲットを見る
4. 膝を抱え込んだまま足を上げる
5. 足を伸ばして軌道を確認する
この一連の流れをスローモーションで行い、体の軸がブレないかチェックしてください。特に「顔を返す」タイミングと「膝の抱え込み」は、この段階で体に覚え込ませましょう。
ステップ2:低いジャンプでの回転
動きを覚えたら、少しだけジャンプしてみます。高く飛ぶ必要はありません。数センチ浮く程度で構いません。ポイントは、空中で一回転して着地できるかどうかです。
この段階では蹴りを出さず、「空中で回って着地する」ことだけに集中しても良いでしょう。慣れてきたら、ジャンプの頂点で軽く足を出す動作を加えます。最初は腰の高さ(中段)を狙い、徐々に高さを上げていくのが安全です。
ステップ3:ミット蹴りでの距離感把握
実際に物を蹴る練習です。サンドバッグや、パートナーに持ってもらったミットを蹴ります。空振りする練習だけでは、実際に当たった時の衝撃や、間合いの感覚が掴めません。
練習のポイント:
最初は柔らかいミットを使いましょう。硬いサンドバッグを無理に蹴ると、タイミングが合わなかった時に膝や足首を痛める可能性があります。足の裏全体ではなく、かかと周辺で「点」で捉える意識を持つと、威力が伝わりやすくなります。
柔軟性と体幹トレーニング
技の練習と並行して行いたいのが、体作りです。特に股関節の柔軟性は、蹴りの高さと美しさに直結します。お風呂上がりなどに開脚ストレッチを行い、可動域を広げましょう。
また、空中でバランスを保つためには体幹(腹筋・背筋)が不可欠です。プランクなどの基本的な体幹トレーニングを行うことで、空中での姿勢が安定し、着地の失敗も減らすことができます。
注意点とリスク管理
飛び後ろ回し蹴りは派手で強力な技ですが、リスクも存在します。安全に楽しむために、以下の点に注意してください。
場所と周囲の確認
大きく移動し、足を振り回す技なので、広いスペースが必要です。自宅で練習する場合は、家具や壁にぶつからないよう十分に注意してください。また、周囲に人がいないことを必ず確認してから行いましょう。
準備運動は念入りに
急に激しい回転やジャンプを行うと、アキレス腱や膝、腰に強い負担がかかります。練習前には必ず全身のウォームアップを行い、体を温めてから始めてください。特に足首と股関節のストレッチは入念に行いましょう。
無理な高さや回数を追わない
「もっと高く飛びたい」「もっと速く回りたい」という焦りは禁物です。フォームが崩れたまま回数を重ねても、変な癖がつくだけでなく、怪我の原因になります。疲れてくると集中力が切れ、着地に失敗しやすくなるので、適度な休憩を挟みながら、一本一本丁寧に練習することをおすすめします。
まとめ

飛び後ろ回し蹴りは、一朝一夕で身につく技ではありませんが、ポイントを押さえて練習すれば、必ずできるようになります。最後に、今回の記事の要点を振り返ってみましょう。
- 飛び後ろ回し蹴りの構造:ジャンプと回転の力を利用し、かかとでフックするように蹴る技。
- 動きの基本:視線の確保(スポッティング)と、膝の抱え込みが成功の鍵。
- 上達のコツ:上半身のひねりを使い、最初は低くゆっくりとした動作から始める。
- 練習の段階:地上でのフォーム確認 → 低いジャンプ → ミット打ち と進める。
- 安全第一:柔軟体操と周囲の安全確認を怠らない。
この技が綺麗に決まった時の爽快感は格別です。ぜひ、焦らず楽しみながら練習を続けて、あなただけの美しい飛び後ろ回し蹴りを手に入れてください。



コメント