「世界最強の立ち技格闘技はどこにあるのか?」その答えとして、多くのファンが真っ先に名前を挙げるのがGLORY(グローリー)です。かつてのK-1ヘビー級の興奮を正統に継承し、世界中から巨漢の猛者たちが集うこのリングは、まさに「実力至上主義」の最高峰。派手なマイクパフォーマンスや演出よりも、純粋な強さとKO決着のみが評価される厳格な舞台です。
この記事では、GLORYの歴史や独自ルール、注目のスター選手はもちろん、オランダ格闘技の強さの秘密や他団体との違いまで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
GLORY格闘技の基本情報と世界的な立ち位置
キックボクシング界において、現在「世界最大規模」と称される団体がGLORYです。ヨーロッパを拠点に世界各地で大会を開催し、立ち技格闘技のメジャーリーグとして君臨しています。
K-1の熱狂を受け継ぐ正統後継者
2010年代初頭、日本で一時代を築いた「K-1」が活動休止状態となった際、世界中のトップ選手たちが戦う場所を失いかけました。その受け皿となり、さらに規模を拡大して2012年に誕生したのがGLORYです。
オランダの名門ジム「ゴールデン・グローリー」をルーツに持ち、当時のライバル団体「It’s Showtime」を買収することで、瞬く間に世界トップの選手層を確立しました。かつてのK-1ファンが熱狂した「ヘビー級のド迫力」と「欧州特有の高度な技術」が融合した、極めてレベルの高い攻防が繰り広げられています。
世界最高峰の「スタンド打撃」専門リーグ
GLORYの最大の特徴は、総合格闘技(MMA)ではなく、パンチとキックのみで戦う立ち技(キックボクシング)に特化している点です。
UFCなどのMMA人気が世界的に高まる中、あえて「寝技なし」の打撃戦にこだわることで、シンプルかつスリリングなKO劇を求めるファン層から絶大な支持を得ています。特に重量級においては、世界中のキックボクサーが「GLORYのベルトこそが世界最強の証」と認める権威あるタイトルとなっています。近年では、キックボクシングだけでなく、MMAからの転向組や、逆にここからMMAへ羽ばたく選手もおり、格闘技界のクロスロードとしても機能しています。
RISEなど日本格闘技界との深い関係
GLORYは孤立した団体ではなく、世界各国の有力団体とパートナーシップを結んでいます。日本では立ち技格闘技団体「RISE(ライズ)」と提携しており、互いのリングに選手を送り込む交流戦が行われています。
これにより、日本のトップ選手が世界王者への挑戦権を得たり、逆に世界の強豪が日本のリングに来襲したりと、国境を超えたドラマが生まれています。日本にいながら世界標準の戦いを目撃できるのも、この協力関係のおかげです。また、過去には「GLORY 4 Tokyo」のように日本で大会を開催した実績もあり、日本のマーケットを重要視していることが伺えます。
なぜオランダ勢は強いのか?GLORYを支配する「ダッチ・スタイル」

GLORYを観戦する上で避けて通れないのが、オランダ人選手の圧倒的な強さです。なぜ彼らはこれほどまでに強いのでしょうか。そこには「ダッチ・キックボクシング」と呼ばれる独自のメソッドがあります。
「対角線」で攻めるコンビネーションの妙
オランダのキックボクシングスタイルの最大の特徴は、パンチとキックを流れるように組み合わせるコンビネーション技術、通称「対角線の攻撃(クロス・アタック)」です。
例えば、「左フック(上半身・左側)」を打った直後に、即座に「右ローキック(下半身・右側)」を叩き込むといった動きです。上下左右に対角線を描くように攻撃を散らすことで、相手のガードを強制的に崩します。ムエタイが「一発の重さ」を重視するのに対し、ダッチ・スタイルは「止まらない連打の回転力」で相手をサンドバッグ状態にして倒すことを得意としています。
防御を許さない「削り」の美学
GLORYのリングでは、ガードの上からでも効かせるようなパワーが求められます。オランダの選手たちは、相手が腕でブロックしていてもお構いなしに強打を叩き込みます。
特に強烈なのがローキックです。パンチで意識を上に向けさせておいて、丸太のような太ももで相手の足を破壊する戦術は、GLORYの伝統的な勝ちパターンの一つです。ラウンドが進むにつれて相手の足が動かなくなり、最後は立っていることすらできなくなる残酷なまでの「削り合い」は、技術と体力の極限勝負と言えるでしょう。
名門ジムが生み出す強豪の系譜
オランダには「マイクス・ジム」「ヘマーズ・ジム」「ボス・ジム」といった世界的な名門ジムが数多く存在します。
これらのジムでは、スパーリング(実戦練習)を試合に近い強度で行う文化が根付いており、日々の練習自体がサバイバルです。この過酷な環境で生き残った選手だけがGLORYのリングに立てるため、デビューした時点で既に完成された強さを持っていることが多いのです。ジムごとのスタイルの違いに注目するのも、通な楽しみ方と言えます。
観戦初心者でも分かる!GLORYのルールと階級
「K-1と何が違うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。基本的には非常に似ていますが、よりアグレッシブな展開を促すための独自ルールが採用されています。
スピードとKOを誘発する攻撃的ルール
試合は通常3分3ラウンド(タイトル戦は5ラウンド)で行われます。パンチ、キック、ヒザ蹴りが有効で、ヒジ打ちは禁止されています。
GLORYルールの最大の特徴は、「クリンチ(相手に抱きつく行為)に対する制限の厳しさ」です。ムエタイのように長く組んで休むことは許されず、相手を掴んでからの攻撃は制限されています(※時期や改正により「ワンキャッチ・ワンアタック」や即ブレイクなど、よりスピーディーな展開になるよう微調整が繰り返されています)。これにより、試合が膠着せず、常に打撃が交錯するスリリングな展開が続きます。
明確なダメージを重視する採点基準
勝敗の判定には「10ポイント・マスト・システム」が採用されていますが、GLORYが最も重視するのは「ダメージ」です。
単に攻撃を当てた回数(手数)よりも、相手にどれだけ効かせたか、どれだけインパクトのある攻撃だったかが優先されます。そのため、コツコツ当ててポイントを稼ぐスタイルよりも、一発で局面を変えるパワーファイターが評価されやすく、最後まで逆転KOの可能性が残るエキサイティングな試合が多くなります。ジャッジの傾向として「攻めている姿勢」も評価されるため、下がる選手には厳しい判定が下ることもあります。
迫力満点の重量級からスピードの軽量級まで
GLORYには複数の階級が存在しますが、特に人気が高いのはヘビー級とライト級周辺です。
| 階級名 | 体重リミット | 特徴 |
|---|---|---|
| ヘビー級 | 95kg以上 | GLORYの看板階級。一撃必倒の巨神たちが集う。 |
| ライトヘビー級 | 95kg以下 | パワーとスピードを兼ね備えたバランスの良い階級。 |
| ミドル級 | 85kg以下 | アレックス・ペレイラなどを輩出した激戦区。 |
| ウェルター級 | 77kg以下 | 欧州勢のフィジカルと技術がぶつかり合う。 |
| ライト級 | 70kg以下 | 日本の「中量級」にあたり、馴染み深い階級。 |
| フェザー級 | 65kg以下 | 日本人が世界王座を狙えるスピードスターの階級。 |
絶対に知っておきたいGLORYのスター選手と因縁
GLORYのリングには、文字通り「生ける伝説」や、後にMMA(総合格闘技)で大成功を収めるような怪物が数多く在籍しています。ここでは選手だけでなく、語り継がれるライバル関係にも触れます。
絶対王者 リコ・ヴァーホーベン
「キング・オブ・キックボクシング」の異名を持つオランダの英雄です。ヘビー級王者として10年以上君臨し続ける、まさにGLORYの象徴的存在。
2メートル近い巨体ながら、スタミナ、テクニック、ディフェンスの全てが完璧に整っており、どんな挑戦者も跳ね返してきました。映画俳優のような端正なルックスと、リング内での冷徹なまでの強さのギャップが魅力。彼が負ける姿を想像することすら難しいと言われる、絶対的なチャンピオンです。彼の試合運びは非常に理知的で、序盤に相手を分析し、後半に圧倒して仕留めるスタイルは「精密機械」とも呼ばれます。
歴史に残る因縁「リコ vs バダ・ハリ」
GLORYの歴史を語る上で外せないのが、悪童バダ・ハリと優等生リコ・ヴァーホーベンのライバル関係です。
K-1時代からのカリスマであり、数々のトラブルも起こしてきた「悪の華」バダ・ハリと、新時代の完璧な王者リコ。二人の対戦は単なる試合を超え、スタジアムを揺るがす一大イベントとなりました。結果的にリコが勝利を収めましたが、怪我による不完全燃焼な決着も含め、世界中のファンが熱狂し、そして議論を交わした伝説のシリーズです。この二人の物語は、GLORYが持つエンターテインメント性の高さを象徴しています。
伝説を残した男 アレックス・ペレイラ
現在はUFC(世界最大の総合格闘技団体)で2階級制覇を成し遂げたスーパースターですが、彼の打撃技術のルーツはGLORYにあります。
GLORY時代にミドル級とライトヘビー級の二階級制覇を達成し、あのイスラエル・アデサニヤを失神KOさせた左フックは「石の拳」と恐れられました。彼のような選手を輩出したことからも、GLORYの打撃レベルがいかに高いかが証明されています。ペレイラの活躍により、MMAファンがGLORYに興味を持つ逆輸入的な現象も起きています。
日本格闘技界からの挑戦者たち
RISEのエースである海人(かいと)選手や、元K-1王者の野杁正明(のいり まさあき)選手など、日本最強クラスの選手たちがGLORYの頂を目指して挑戦を続けています。言葉も環境も違う敵地での戦いは困難を極めますが、彼らが「世界の壁」を突き破る瞬間を多くのファンが待ち望んでいます。
ONE ChampionshipやK-1との違いとは?
格闘技を見始めたばかりの方にとって、他の有名団体とGLORYがどう違うのかは分かりにくいポイントです。ここでは主な違いを比較してみましょう。
ONE Championshipとの違い
アジア最大の団体「ONE」とGLORYの最大の違いは、競技の専門性とグローブです。
ONEのキックボクシング部門では、オープンフィンガーグローブ(MMA用の薄いグローブ)を使用する試合が増えており、より危険でKOが起きやすい特殊な戦いになっています。一方、GLORYは伝統的なボクシンググローブを使用し、リングで行われます。GLORYの方が「純粋なキックボクシングの攻防」や「ガードの技術」を楽しめる正統派なスタイルと言えます。また、ONEはケージ(金網)を使用しますが、GLORYは四角いリングを使用する点も大きな違いです。
日本の新生K-1との違い
現在のK-1とGLORYの違いは、階級の重心にあります。
日本のK-1は、軽量級(55kg〜65kg)のスピード感ある戦いが中心で、日本人のスター選手が多く活躍しています。対してGLORYは、中量級から重量級(70kg〜ヘビー級)がメインコンテンツであり、選手の平均身長や体重が大きく異なります。「速さのK-1」「重さとパワーのGLORY」と捉えると分かりやすいでしょう。もちろん両団体ともに全階級でレベルは高いですが、ショーとしての見せ方にそれぞれの特色が出ています。
日本からGLORY格闘技を視聴する方法と楽しみ方
かつては視聴が難しかったGLORYですが、現在は日本国内でも快適に観戦できる環境が整っています。
国内配信は「U-NEXT」が独占ライブ中継
2025年現在、日本でGLORYを視聴する最も確実な方法は、動画配信サービス「U-NEXT(ユーネクスト)」を利用することです。
U-NEXTはGLORYと日本国内の配信パートナーシップを結んでおり、ナンバーシリーズ(GLORY 90など)や、ビッグマッチである「COLLISION」などを高画質のライブ配信で楽しむことができます。見逃し配信にも対応しているため、時差の関係で深夜や早朝の放送になっても、翌日にゆっくり視聴することが可能です。実況解説には日本の格闘技に詳しい専門家がつくこともあり、予備知識がなくても安心して楽しめます。
YouTube公式チャンネルで予習・復習
試合を見る前に選手のことを知りたい場合は、GLORYの公式YouTubeチャンネルがおすすめです。
過去の名勝負のフル動画や、KOハイライト集(Top 10 Knockouts)、選手のドキュメンタリー映像などが無料で大量に公開されています。特に「Free Fight」として公開されている過去のタイトルマッチは、画質も良く見応え抜群です。英語のコンテンツが中心ですが、迫力ある映像を見るだけでも十分に楽しめます。
英語実況でも楽しめる観戦のコツ
海外配信の映像をそのまま見る場合、実況は英語になりますが、心配はいりません。
画面には「有効打数」や「ダメージ評価」などのスタッツ(数値データ)が表示されることが多く、戦況が視覚的に分かりやすくなっています。また、観客の盛り上がりやダウンシーンのリプレイ映像は万国共通の興奮を与えてくれます。「KO(ノックアウト)」や「Down(ダウン)」といったシンプルな単語さえ聞き取れれば、試合の熱狂に乗り遅れることはありません。
まとめ

GLORY格闘技は、世界中の立ち技ファイターたちが目指す「最高峰の山」です。オランダで進化した高度な打撃技術と、重量級ならではの迫力が融合した唯一無二の空間がそこにはあります。
- K-1の系譜を継ぐ世界最大規模の立ち技団体
- 「対角線攻撃」など高度なダッチ・スタイルが見られる
- リコ・ヴァーホーベンら、世界最強の怪物が集結
- ONEやK-1とは違う、正統派かつ重量級重視の魅力
- 日本ではU-NEXTでリアルタイム観戦が可能
ヘビー級の拳が交差する轟音や、軽量級の目にも留まらぬコンビネーションは、一度見ればそのレベルの高さに圧倒されるはずです。日本の格闘技だけでは味わえない、世界規格の迫力をぜひ体感してみてください。次回の大会では、新たなKO伝説が生まれる瞬間に立ち会えるかもしれません。



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