テレビや動画で格闘技を観戦していると、「今の技、なんていう名前だろう?」「解説者が叫んでいる技名にはどんな意味があるの?」と疑問に思うことはありませんか。格闘技の技名は、単なる動作の説明にとどまらず、その技の歴史や開発者の思い、さらには見た目の美しさや恐ろしさまで表現されています。
柔道の伝統的な和名から、プロレスの派手でかっこいいカタカナ名、そして総合格闘技(MMA)で使われる実用的な英語名まで、その世界は実に奥深いものです。技の名前を知ることで、選手の攻防がより鮮明に理解できるようになり、観戦の興奮が何倍にも膨らみます。
この記事では、格闘技技名の基本的な分類から、思わず言いたくなるかっこいい技名の由来、そして創作やネーミングのヒントになる情報までを幅広くご紹介します。技名の世界を通して、格闘技の新しい楽しみ方を見つけていきましょう。
格闘技技名の基礎知識!打撃・投げ・寝技の分類を理解しよう
格闘技の技名は、大きく分けて「打撃」「投げ」「寝技(組み技)」の3つに分類されます。まずは、それぞれのカテゴリーでどのような技名が使われているのか、基本的な仕組みと名称のルールを見ていきましょう。これを知るだけで、実況解説の内容が驚くほど頭に入ってくるようになります。
打撃技(ストライキング)の名称と特徴
打撃技は、パンチやキック、肘(ひじ)や膝(ひざ)を使った攻撃の総称です。ボクシング、キックボクシング、ムエタイ、空手などで主に使用されます。技名は「体のどの部分で」「どのような軌道で」打つかによって決まることが多いのが特徴です。
例えば、ボクシングの「ジャブ」は牽制(けんせい)のために真っ直ぐ素早く打つパンチ、「フック」は横から弧を描くように打つパンチ、「アッパー」は下から突き上げるパンチです。これらは動作そのものが名前になっています。
蹴り技(キック)も同様で、「ローキック(下段蹴り)」「ミドルキック(中段蹴り)」「ハイキック(上段蹴り)」のように、蹴る高さによって名前が変わります。また、空手由来の「三日月蹴り(みかづきげり)」のように、足の軌道が三日月のような形を描くことから名付けられた美しい日本語の技名も存在します。打撃技の名前はシンプルですが、その分、スピードや威力が直感的に伝わるものが多いのです。
投げ技(スローイング)の名称と特徴
投げ技は、相手のバランスを崩して地面に叩きつける技です。柔道、レスリング、サンボなどで見られます。投げ技の名称は、日本古来の「柔道」と西洋の「レスリング」で命名の傾向が大きく異なります。
柔道の技名は非常に論理的です。「背負投(せおいなげ)」は背中に背負って投げる、「大外刈(おおそとがり)」は相手の外側から足を刈る、といった具合に、動作の原理がそのまま名前になっています。これにより、名前を聞けばどのような動きをする技なのかがおおよそ想像できます。
一方、レスリングやプロレスの投げ技は、「スープレックス(反り投げ)」や「パワーボム」のように、力強さやインパクトを重視したカタカナ語が多く使われます。「ジャーマン・スープレックス」のように、発祥国や開発者の背景が含まれることもあり、技名そのものが一つのブランドのような役割を果たしていることもあります。
寝技・関節技(グラップリング)の名称と特徴
寝技は、地面で相手を抑え込んだり、関節を極めたり、首を絞めたりする技です。総合格闘技(MMA)やブラジリアン柔術(BJJ)で重要な役割を果たします。この分野の技名は、人体の構造に基づいた専門的な名称が多くなります。
「腕ひしぎ十字固め」は、相手の腕を自分の股で挟み、十字の形で肘関節を極める技です。英語では「アームバー(Armbar)」と呼ばれ、どちらも「腕を一直線に固定する」という意味を含んでいます。また、「三角絞め(さんかくじめ)」は自分の足で三角形を作って相手の首を絞める技で、英語では「トライアングル・チョーク(Triangle Choke)」と呼ばれます。
このように、寝技の名称は日本語と英語で直訳の関係になっていることが多く、どちらか一方を覚えれば海外の試合でも理解しやすいのがメリットです。実況では「チョーク(絞め)」や「ロック(固定)」という言葉が頻繁に出てくるので、これらに注目すると攻防の意図が分かりやすくなります。
ポジショニングに関する用語
技そのものの名前ではありませんが、格闘技、特に総合格闘技において「自分がどのような体勢にいるか」を示すポジション名も重要です。これらも技名の一種として扱われることがよくあります。
代表的なのが「マウントポジション」です。これは相手のお腹の上に馬乗りになった状態を指し、圧倒的に有利な体勢を意味します。また、「ガードポジション」は下になった選手が足を使って相手の攻撃を防いでいる状態です。
解説で「マウントを取った!」「ガードの中にいる」といった言葉が聞こえたら、それは具体的な攻撃技ではなく、選手同士の位置関係を説明しています。ポジションの名前を覚えることは、試合の優劣を判断する「ものさし」を持つことと同じくらい大切です。
かっこいい格闘技技名の由来とは?言語や歴史的背景を探る

格闘技の技名には、単なる動作説明を超えた「物語」が隠されています。開発者の名前、動物の動き、あるいは発祥した国や地域の名前など、その由来を知ると技への愛着が湧いてきます。ここでは、思わず「へぇ〜」と言いたくなるような技名の背景を探っていきましょう。
開発者や伝説的な選手に由来する技名
特定の選手が開発したり、得意技として使い続けたりしたことで、その選手の名前がそのまま技名になったケースがあります。これは格闘技界における最大級の栄誉とも言えます。
他にも、「ヴォンフルー・チョーク(Von Flue Choke)」はUFCファイターのジェイソン・ヴォンフルーが得意とした絞め技ですし、プロレスでは「カール・ゴッチ式」や「テーズ・プレス(ルー・テーズ)」など、往年の名レスラーの名を冠した技が数多く存在します。名前がついている技は、その選手がどれだけその技を磨き上げ、観客にインパクトを与えたかの証拠でもあるのです。
動物や自然現象に例えられた技名
動きの特徴を動物や自然現象に例えた技名は、イメージが湧きやすく、かつ強そうな印象を与えます。特にプロレスや伝統的な武術で多く見られます。
「コブラツイスト」は、相手の体に蛇が巻きつくようにして締め上げる技です。見た目の苦しさと蛇の執念深さが重なるネーミングです。また、柔術やMMAで使われる「アナコンダチョーク」も、大蛇が獲物を締め上げる様子から名付けられました。
自然現象では、「旋風脚(せんぷうきゃく)」や「稲妻レッグラリアット」などが挙げられます。これらは技のスピードや衝撃を風や雷に例えており、視覚的なかっこよさを言葉で補強しています。「嵐」や「竜巻」といった言葉を含む技名は、フィクションの世界だけでなく、実際のプロレス技としても好んで使われます。
国名や地域名が含まれる技名
技が生まれた場所や、その技を得意とする選手出身地にちなんだ名前もポピュラーです。最も有名なのは「ジャーマン・スープレックス(原爆固め)」でしょう。これは「レスリングの神様」と呼ばれたカール・ゴッチ(ドイツ出身)が日本に伝えたことから、この名前が定着しました。
他にも以下のような例があります。
● ロシアン・フック
ロシアの選手(イゴール・ボブチャンチンなど)が得意とした、独特の軌道を描く強力なパンチ。
● タイ・クリンチ(首相撲)
ムエタイ(タイの国技)で多用される、相手の首を両手でロックして膝蹴りを打つための組み手。
● ブラジリアン・キック
極真会館のブラジル支部出身の選手たちが使い始めた、軌道が変化するハイキック。
これらの名前は、その国や地域の格闘技スタイルがどのような特徴を持っているか(ロシアなら剛腕、タイなら首相撲など)を象徴しており、文化的な背景も感じさせてくれます。
プロレス・総合格闘技(MMA)でよく聞く有名な技名
格闘技の中でも、特にプロレスと総合格闘技(MMA)は技名の宝庫です。プロレスは「魅せる」ための華やかな名前が多く、MMAは「実用性」と「グローバルな共通語」としての名前が多く使われます。ここでは、テレビやネットニュースでよく目にする有名な技名をピックアップして解説します。
プロレスの必殺技(フィニッシャー)の魅力
プロレスにおける技名は、選手のキャラクターそのものです。特に試合を決める「フィニッシャー(必殺技)」には、非常に凝った名前が付けられます。
例えば、オカダ・カズチカ選手の「レインメーカー」。直訳すると「金の雨を降らせる男」という意味ですが、相手の腕を引いてラリアットを叩き込むこの技は、彼がプロレス界に富と繁栄をもたらすというキャラクター性と完全にリンクしています。
また、内藤哲也選手の「デスティーノ」はスペイン語で「運命」を意味します。メキシコ遠征を経て大きく変貌した彼のキャリア(運命)を象徴する技名です。昔の技で言えば、小橋建太選手の「バーニング・ハンマー(剛腕)」や、三沢光晴選手の「エメラルド・フロウジョン」など、宝石や熱さを連想させる響きの良い言葉選びは、ファンの心に強く残ります。
MMAで頻出する「チョーク」と「ロック」
総合格闘技(MMA)では、より実践的で英語ベースの技名が主流です。特に覚えておきたいのが「リアネイキッドチョーク(RNC)」です。日本語では「裸絞め(はだかじめ)」と呼ばれます。「Rear(後ろから)」「Naked(道着を使わず素手で)」「Choke(絞める)」という構成で、MMAで最も決まり手が多い技の一つです。
また、「ギロチンチョーク(フロントチョーク)」も有名です。相手の首を脇に抱えて絞める形が、処刑道具のギロチンに見えることから名付けられました。これらの技は一瞬で試合を終わらせる威力があるため、実況がこの名前を叫んだ瞬間は、試合のクライマックスであることが多いのです。
関節技では「カーフキック」が近年注目されています。「Calf(ふくらはぎ)」を蹴るこの技は、地味に見えますがダメージが蓄積すると立てなくなるほど強力です。数年前まではあまり聞かれなかった言葉ですが、現代MMAのトレンドとして定着しました。
空中で舞う!華麗な飛び技の名称
軽量級の選手が見せる空中殺法も、格闘技の華です。「ムーンサルト・プレス」は、月面宙返りのように空中で回転して相手にボディプレスをする技で、その美しさから多くのファンを魅了してきました。
「シューティング・スター・プレス」という技もあります。これはジャンプした後に空中で前転するという、人間離れした動きを見せる技で、名前も「流れ星」と幻想的です。空中技の名前は、重力を無視して空を飛ぶ選手への憧れが込められており、聞くだけでワクワクするような響きを持っています。
創作やネーミングに使える!響きが良い格闘技技名のアイデア
小説や漫画、ゲームのキャラクター作りにおいて、かっこいい技名は欠かせません。実在する格闘技の技名には、創作のヒントになる「響きの良さ」や「言葉の組み合わせ」がたくさん詰まっています。ここでは、ネーミングセンスを磨くためのヒントをご紹介します。
ドイツ語やフランス語を取り入れた響き
英語以外の言語を取り入れることで、独特の重厚感や鋭さを出すことができます。特にドイツ語は、濁音が多く力強い印象を与えるため、強力な投げ技や打撃技のネーミングに向いています。
例えば、プロレス技の「ジャーマン(German)」もそうですが、ドイツ語で「シュトゥルム(嵐)」や「ブリッツ(稲妻)」といった単語を組み合わせると、一気に威圧感が増します。また、フランス語由来の格闘技「サバット」の用語や、フェンシングの用語(フルーレ、エペなど)は、優雅でスピード感のある技名を作る際に参考になります。
「色」や「宝石」を組み合わせるテクニック
三沢光晴選手の「エメラルド・フロウジョン」のように、色や宝石の名前を入れると、技に高貴さや神秘性が加わります。「シャイニング(輝く)」「プラチナ」「クリムゾン(深紅)」などの言葉は、必殺技としての特別感を演出するのに最適です。
ネーミングのヒント:
「形容詞」+「名詞」の組み合わせが基本です。
例:
・シャイニング(輝く)+ ウィザード(魔術師)
・スターダスト(星屑)+ プレス(圧殺)
・ダイヤモンド + カッター
このように、美しい言葉と攻撃的な言葉を組み合わせる「ギャップ」が、かっこいい技名を生むコツです。
神話や宗教的な用語を用いたネーミング
神話に登場する武器や神々の名前を技名に冠するのも、定番かつ効果的な手法です。「トールハンマー(雷神の槌)」「アルゼンチン・バックブリーカー(拷問技の一種ですが、地名が入っています)」、「ゴッド・ハンド」など、スケールの大きさを感じさせる言葉は、最強クラスの技に使われる傾向があります。
また、「十字架(クロス)」「断頭台(ギロチン)」「昇天」といった、生と死を連想させる言葉も、格闘技の緊張感とマッチするため頻繁に使われます。創作で技名を考える際は、その技が持つ威力や属性(火、雷、闇など)に合わせて、神話のモチーフを探してみると良いアイデアが浮かぶでしょう。
格闘技技名を覚えるためのコツと観戦の楽しみ方
ここまでたくさんの技名を紹介してきましたが、「全部覚えるのは大変そう……」と感じた方もいるかもしれません。しかし、無理に暗記する必要はありません。自然と耳に馴染ませ、楽しく覚えるためのコツがあります。
実況・解説の言葉に耳を傾ける
最も効率的なのは、試合を観戦しながら実況や解説者の言葉を意識して聞くことです。彼らはプロですので、技が決まった瞬間にその名前を叫んだり、リプレイ中に「これは○○という技で、ここが効くんですよ」と丁寧に説明してくれたりします。
特に、お気に入りの選手を見つけて、その選手の得意技(フィニッシャー)だけを最初に覚えてみてください。「あ、またあの技が出た!」と気づけるようになると、観戦の楽しさが一気に増します。好きな選手を通して、関連する技名を少しずつ増やしていくのが一番の近道です。
格闘ゲームで遊びながら覚える
『鉄拳』や『ストリートファイター』、『龍が如く』などのアクションゲームや格闘ゲームは、技名を覚えるのに最適な教材です。ゲーム内のコマンドリストには、実在する格闘技の技名がずらりと並んでいます。
自分でキャラクターを操作して技を出すことで、「このボタンを押すと出るこの動きが『巴投げ(ともえなげ)』なんだ」と、名前と動作をセットで体感的に覚えることができます。ゲームオリジナルの技もありますが、その多くは実際の格闘技をベースにしているため、基礎知識として十分に役立ちます。
技の「形」や「痛い場所」に注目する
名前を忘れてしまっても、技の理屈がわかれば楽しめます。例えば、関節技なら「腕が逆方向に曲がっているから痛いんだな」、絞め技なら「首が締まって苦しそうだ」と、選手の体のどこにダメージがあるかに注目してみましょう。
技名はあくまで「ラベル」です。大切なのは、その技が試合の中でどのような効果を発揮しているかを感じ取ることです。 「腕十字」という名前が出てこなくても、「腕を伸ばして極めている!」と分かれば、それで十分に観戦上級者と言えます。
まとめ:格闘技技名を知れば奥深さが広がる

格闘技の技名は、単なる記号ではなく、その技の歴史、形状、そして開発者の魂が込められたメッセージです。打撃、投げ、寝技といった基本的な分類を知るだけでも、試合の流れがよく分かるようになります。
また、プロレスのようなエンターテインメント性の高い分野では、ネーミングセンスそのものが選手の魅力の一部となっており、創作活動のヒントにもなるでしょう。一方で、MMAや柔道のような競技では、機能美あふれる名称が実況を盛り上げます。
最初は「かっこいい響きだな」という興味からで構いません。ぜひ、次に格闘技を見るときは、飛び交う技名に少しだけ耳を傾けてみてください。きっと今まで以上に、リング上の攻防がドラマチックに見えてくるはずです。



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