日本国内で最も熱い盛り上がりを見せている格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」。その中でも、スター選手がひしめき合い、名勝負が次々と生まれているのが「フェザー級」です。朝倉未来選手や平本蓮選手、そして鈴木千裕選手など、カリスマ性のあるファイターたちがこの階級でしのぎを削ってきました。
しかし、格闘技を見始めたばかりの方にとって、「フェザー級って結局何キロなの?」「UFCのフェザー級とは違うの?」といった疑問は尽きないものです。体重のわずかな違いが勝敗を分ける格闘技の世界において、この「数字」を知ることは、試合をより深く楽しむための第一歩となります。
そこで今回は、RIZINフェザー級の正確な体重リミットや、計量オーバー時の厳しいペナルティ、そしてこの階級を彩ってきた歴代王者たちの変遷について詳しく解説します。2025年現在の最新情報も交えながら、フェザー級の魅力を余すところなくお伝えしますので、ぜひ観戦の参考にしてください。
RIZINフェザー級の体重リミットと基本ルール
格闘技において「階級」は、選手の体格差を公平にするための最も重要なルールです。まずは、RIZINフェザー級が具体的に何キロで行われているのか、その規定を詳しく見ていきましょう。
66.0kgというリミットの重さ
RIZINフェザー級の体重リミットは、66.0kg(66.0キログラム)以下と定められています。選手は試合の前日に行われる「公式計量」までに、この体重まで体を絞らなければなりません。
一般成人男性の平均体重が60kg代後半から70kg代であることを考えると、66kgという数字は「中肉中背の男性」に近いイメージを持たれるかもしれません。しかし、実際にリングに上がる選手たちの体は、筋肉の塊です。彼らの多くは、普段の生活では75kg〜80kg、時にはそれ以上の体重があります。
そこからトレーニングと食事制限、そして最後の「水抜き」と呼ばれる過酷な脱水工程を経て、計量計に乗る瞬間だけ66.0kgに合わせるのです。この66.0kgという数字は、スピードとパワーが最もバランス良く発揮できる「神の階級」とも呼ばれ、日本人選手の体格にも非常に適していると言われています。
契約体重(キャッチウェイト)との違い
RIZINを見ていると、時折「68kg契約」や「66.5kg契約」といった言葉を耳にすることがあるかもしれません。これは通常の階級(フェザー級規定)とは異なり、その試合単体でお互いが合意した体重で戦う「キャッチウェイト」と呼ばれるものです。
【通常の階級戦とキャッチウェイトの違い】
● フェザー級規定(66.0kg)
王座戦やランキングに関わる公式戦で適用される、厳格な階級ルールです。
● キャッチウェイト(契約体重)
急なオファーで減量期間が足りない場合や、異なる階級の選手同士が戦う場合に設定されます。例えば、66kgの選手と71kg(ライト級)の選手が戦う際、中間の68kgに設定するようなケースです。
基本的には、タイトルマッチやGP(グランプリ)などの重要な試合はすべて正規の66.0kgで行われます。「フェザー級」と銘打たれている試合であれば、例外なく66.0kgがリミットとなります。
計量オーバー時のペナルティ規定
もし選手が前日計量で66.0kgを少しでも超えてしまった場合、RIZINでは非常に厳しいペナルティが課されます。これは競技の公平性を保つため、そしてプロとしての責任を問うための措置です。
ペナルティの内容は、超過した体重の幅によって異なりますが、一般的には「レッドカード」や「イエローカード」といった減点措置と、ファイトマネーの減額(没収)が適用されます。
過去には、王者であったクレベル・コイケ選手がタイトルマッチの計量でわずか400gオーバーしてしまい、試合を行う前に王座を剥奪されたという衝撃的な事件もありました。たった数百グラムが、選手のキャリアを大きく左右するのです。
他の階級や他団体との体重比較

「RIZINのフェザー級」と「UFCのフェザー級」は同じ名前ですが、実は微妙に体重規定が異なります。ここでは、他団体や他の階級との比較を通して、66.0kgという数字の立ち位置を解説します。
バンタム級やライト級との差
RIZINにはフェザー級の上下に、「バンタム級」と「ライト級」が存在します。それぞれの体重差はおよそ5kgずつ開いています。
| 階級名 | 体重リミット | 特徴 |
|---|---|---|
| バンタム級 | 61.0kg | スピード重視。軽量級ならではの目にも止まらぬ攻防が魅力。 |
| フェザー級 | 66.0kg | スピードとパワーが両立。KO決着も多く、層が厚い。 |
| ライト級 | 71.0kg | パワー重視。体が大きく、一発の破壊力が格段に上がる。 |
たった5kgの差に見えるかもしれませんが、格闘技においてこの差は絶大です。バンタム級から上げてきた選手はスピードで優るもののパワー負けすることがあり、逆にライト級から下げてきた選手は減量が厳しく、コンディションを崩すリスクがあります。フェザー級は、まさにこの中間に位置する激戦区なのです。
UFCフェザー級(145ポンド)との違い
世界最高峰の団体「UFC」のフェザー級リミットは「145ポンド」です。これをキログラムに換算すると、約65.77kgとなります。
【ここがポイント】
RIZIN:66.0kg
UFC:約65.8kg(145ポンド)
差:約200g
RIZINの方が約200gほど重く設定されています。「たった200g」と思うかもしれませんが、限界まで体を絞り込んでいる選手にとって、最後に水を一口飲めるかどうかの200gは天国と地獄の差があります。そのため、海外の選手がRIZINに参戦する際、「リカバリーがしやすい」「減量が少し楽だ」と感じることもあるようです。
また、UFCでは王座戦以外の試合で「1ポンド(約450g)のオーバー」までは許容されるルールがありますが、RIZINには基本的にそのような許容範囲(猶予)はありません。66.0kgジャスト、もしくはそれ以下である必要があります。
適正階級を見極める難しさ
選手にとって、どの階級で戦うかは選手生命に関わる問題です。フェザー級で戦う選手の多くは、身長170cm〜180cm程度がボリュームゾーンですが、近年では身長180cmを超える大型の選手も増えてきました。
無理な減量を続けてパフォーマンスを落とすよりも、階級を上げて成功する選手もいれば(例:元バンタム級王者の堀口恭司選手が一時期フライ級に下げたように、適正を探る動きは常にあります)、逆に階級を下げて体格差を活かそうとする選手もいます。しかし、フェザー級は特に選手層が厚いため、「減量がきついから上げる」といった安易な選択が通用しない厳しさがあります。
RIZINフェザー級の歴代王者とトップファイター
RIZINフェザー級の歴史は、まさに「戦国時代」と呼ぶにふさわしい激動の歴史です。ベルトが次々と持ち主を変え、そのたびにドラマが生まれました。ここでは、この階級を作り上げてきた歴代王者と、シーンを牽引してきたスター選手たちを紹介します。
初代王者から現在の王者までの変遷
RIZINフェザー級王座は2020年に新設されました。それまではノンタイトル戦が主でしたが、選手層の充実に伴いベルトが作られたのです。
【RIZINフェザー級 歴代王者リスト】
初代:斎藤裕(さいとう ゆたか)
安定した実力と精神力で、朝倉未来との決定戦を制し初代王者に輝きました。
第2代:牛久絢太郎(うしく じゅんたろう)
飛び膝蹴りによる流血ストップで斎藤裕を下し、王座を奪取。粘り強いファイトスタイルが特徴です。
第3代:クレベル・コイケ
圧倒的な柔術テクニックで、三角絞めなどの一本勝ちを量産。「RIZIN無敗」のまま王者に上り詰めました。
第4代:ヴガール・ケラモフ
アゼルバイジャンの強豪。驚異的なフィジカルとレスリング力で相手を圧倒し、ベルトを巻きました。
第5代:鈴木千裕(すずき ちひろ)
「稲妻」の異名を持つハードパンチャー。下からの蹴り上げ(ペダラーダ)でケラモフをKOするという衝撃的な勝ち方で王座を戴冠しました。
第6代:クレベル・コイケ
一度は体重超過でベルトを失いましたが、実力で再び王座に返り咲きました。
第7代:ラジャブアリ・シェイドゥラエフ
2025年、新たな脅威として現れたキルギス/タジキスタン系のファイター。圧倒的なグラップリング力で新時代の到来を告げました。
このように、短期間でベルトが移動していることからも、実力が拮抗したハイレベルな階級であることがわかります。
階級を盛り上げるスター選手たち
王座には手が届かなかった時期があっても、この階級の人気を爆発させた立役者といえば、やはり朝倉未来(あさくら みくる)選手でしょう。彼の分析力とカウンターの打撃、そしてYouTuberとしての発信力は、RIZINフェザー級を「日本で一番注目される階級」へと押し上げました。
また、平本蓮(ひらもと れん)選手の存在も欠かせません。K-1からMMAに転向し、当初は苦戦したものの、急激な成長を遂げました。「THE MATCH」以降の格闘技ブームを牽引し、SNSでのトラッシュトークを含め、常に話題の中心にいます。2024年の「超RIZIN.3」での朝倉未来選手との一戦は、日本格闘技史に残る大きな分岐点となりました。
海外からの強豪選手に注目
近年、RIZINフェザー級は「鎖国」状態ではなく、世界中から強豪が集まる国際的な階級になっています。第4代王者のケラモフ選手をはじめ、ロシア、中央アジア、ブラジルなどから、「UFCでも通用するのではないか」と噂されるレベルの選手が参戦しています。
特に中央アジア勢のフィジカルとレスリング技術は脅威的で、日本人選手たちがこれにどう対抗していくかが、今後の大きな見どころとなっています。
試合までの減量とコンディション調整
66.0kgというリミットをクリアするために、選手たちは壮絶な戦いを強いられています。試合の勝敗は、リングに上がる前の「減量」ですでに始まっていると言っても過言ではありません。
水抜き減量のリスクと実態
多くの格闘家が行っているのが「水抜き」という減量法です。これは、脂肪を燃焼させて体重を落とす通常のダイエットとは異なり、体内の水分を極限まで排出して数キログラムを一気に落とす方法です。
試合の数日前から塩分をカットし、水分摂取量を調整。そして計量直前にサウナや半身浴で汗を出し切り、体から水分を絞り出します。成功すれば計量をパスできますが、失敗すれば脱水症状で倒れたり、腎臓に深刻なダメージを負ったりする危険な行為でもあります。
計量後のリカバリーの重要性
無事に計量をパスした選手は、すぐに水分と栄養を補給し、体を回復(リカバリー)させます。ここが勝負の分かれ目です。
「水抜き」で減らした体重は、水分を戻せばすぐに戻ります。そのため、66.0kgで計量した選手が、翌日の試合時には70kg〜75kg近くまで戻っていることが一般的です。いかに胃腸に負担をかけず、効率よく水分とエネルギーを筋肉に行き渡らせるか。リカバリーの質が良い選手ほど、試合当日に力強いパフォーマンスを発揮できます。
普段の体重(通常体重)はどれくらい?
ファンとして気になるのは、「普段はどれくらい大きいの?」という点でしょう。RIZINフェザー級の選手の場合、オフ(試合がない期間)の体重は75kg〜80kg、中には85kg近くある選手もいます。
しかし、あまりに普段の体重が重すぎると減量幅が大きくなり、体への負担が増します。そのため、近年では普段から節制し、通常体重を72kg〜74kg程度に抑えて、減量のリスクを減らす選手も増えてきています。トップファイターほど、日頃の体調管理を徹底しているのです。
RIZINフェザー級を楽しむための観戦ポイント
最後に、体重や選手の特徴を知った上で、RIZINフェザー級の試合をより楽しむためのポイントを3つご紹介します。
スピードとパワーのバランスが絶妙
フェザー級最大の魅力は、重量級のような「一発で倒すパワー」と、軽量級のような「目にも止まらぬスピード」が共存している点です。
ヘビー級では動きが緩慢になりがちで、フライ級ではKOが生まれにくい傾向がありますが、フェザー級はその両方の「いいとこ取り」です。スピーディーな打撃戦の中で、一瞬にして勝負が決まるKOシーンが頻繁に見られます。瞬き厳禁の展開が続くのがこの階級の特徴です。
ストライカーとグラップラーの相性
RIZINフェザー級には、鈴木千裕選手や平本蓮選手のような強力な打撃を持つ「ストライカー」と、クレベル・コイケ選手やシェイドゥラエフ選手のような寝技を得意とする「グラップラー」が混在しています。
打撃で倒すか、寝技で絞めるか。全く異なるスタイルの選手が66.0kgという同じ体重でぶつかり合うとき、そこには「異種格闘技戦」のような緊張感が生まれます。特に、打撃選手がどうやってタックルを切るか、寝技選手がどうやって距離を詰めるかという駆け引きは必見です。
リングとケージによる戦い方の変化
RIZINには、四角い「リング」で行われる大会と、金網に囲まれた「ケージ」で行われる大会(LANDMARKシリーズなど)があります。
リングはコーナーに追い詰めやすく、足を使って逃げるスペースが限られるため、打撃の打ち合いが起きやすい傾向があります。一方、ケージは広くて円形なので、ステップワークが使いやすく、また金網に相手を押し込んでテイクダウンを奪うレスリング技術が活きやすくなります。
フェザー級の選手たちも、舞台がリングかケージかによって戦術を微調整しています。会場の形状にも注目してみると、より深く試合を味わうことができるでしょう。
まとめ RIZINフェザー級は66kgのリミットが生む熱狂の舞台
今回は、RIZINフェザー級の「体重」をキーワードに、その魅力やルールを解説しました。
ここまでのポイントを振り返りましょう。
- 体重リミットは66.0kg:UFCより約200g重い設定。
- 厳しいペナルティ:計量オーバーは王座剥奪や試合無効のリスクがある。
- 歴代王者の激しい入れ替わり:斎藤裕、牛久、クレベル、ケラモフ、鈴木千裕、シェイドゥラエフなど、強豪たちがベルトを争ってきた。
- 減量とリカバリーの技術:水抜きを含め、試合前の調整が勝敗を大きく左右する。
- 適正階級の重要性:スピードとパワーのバランスが取れた「神の階級」。
66.0kgという数字の裏には、選手たちの並々ならぬ努力と戦略が隠されています。次にRIZINフェザー級の試合を観戦する際は、ぜひ計量結果や選手たちの体つきにも注目してみてください。「この体のためにどれだけの準備をしてきたのか」を知ることで、リング上の戦いがより一層、熱く胸に響くはずです。



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