「UFCフライ級の体重は何キロなのだろう?」
最近、平良達郎選手や朝倉海選手の活躍により、日本国内でもUFCフライ級への注目度が急激に高まっています。世界最高峰の舞台で戦う彼らが、一体どれほど過酷な減量を乗り越えているのか気になる方も多いでしょう。
結論から言うと、UFCフライ級のリミットは125ポンド、つまり約56.7kgです。しかし、実は試合が「タイトルマッチ」か「ノンタイトル戦」かによって、微妙なルールの違いが存在することをご存知でしょうか。
この記事では、UFCフライ級の正確な体重規定や、RIZINなど他団体との違い、そしてこの階級で戦う日本人選手たちの凄さについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。
UFCフライ級の体重リミットと基本的な定義

まずは、UFCフライ級という階級が具体的にどのような数字で定義されているのか、基本的なルールを見ていきましょう。UFCはアメリカの団体であるため、体重の単位には「ポンド(lb)」が使われます。
125ポンドをキログラムに換算すると?
UFCフライ級の規定体重は「125ポンド」です。これを日本のキログラム法になおすと、正確には56.699kgとなります。一般的には、小数点第二位を四捨五入して「56.7kg」と表記されることがほとんどです。
これは、成人男性の格闘技階級としてはUFCの中で最も軽い階級です。一般的な成人男性の平均体重と比較してもかなり軽い数値ですが、ここに筋肉の塊のようなファイターたちが体重を合わせてくるため、体脂肪率は極限まで削ぎ落とされています。
【UFCフライ級の定義】
・ポンド表記:125 lbs
・キロ表記:56.7 kg
タイトルマッチとノンタイトル戦の「1ポンド」の差
UFCの計量には、非常に重要な「1ポンド・オーバー・ルール(1ポンド規定)」というものが存在します。これは、ベルトがかかっていない通常の試合(ノンタイトル戦)においてのみ適用されるルールです。
ノンタイトル戦では、規定体重の125ポンドにプラス1ポンド(約450g)までの超過が許容されています。つまり、126ポンド(約57.15kg)までであれば計量パスとなります。これは体重計の誤差などを考慮して設けられた慣習的なルールです。
一方で、チャンピオンベルトを争う「タイトルマッチ」では、この1ポンドの猶予は一切認められません。ジャスト125ポンド(56.7kg)以下でなければならず、たとえ数グラムでもオーバーすれば王座獲得の権利を失います。この厳格さが、タイトルマッチの緊張感をさらに高めているのです。
他の階級との比較(ストロー級・バンタム級)
フライ級がどのくらいの位置付けなのか、前後の階級と比較してみましょう。
まず、UFC男子にはフライ級より軽い「ストロー級(115ポンド/約52.2kg)」が存在しません。ストロー級は女子のみの階級となっているため、男子選手にとってはこのフライ級がUFCへの最軽量の入り口となります。
一つ上の階級は「バンタム級」で、リミットは135ポンド(約61.2kg)です。フライ級との差は10ポンド(約4.5kg)。格闘技において4.5kgの差は非常に大きく、パワーや耐久力に決定的な違いが生まれます。そのため、骨格が小さめの選手が無理にバンタム級で戦うとフィジカル負けしてしまうことが多く、適正階級であるフライ級に落とすことが勝利への鍵となります。
減量の過酷さと「水抜き」のリスク

「56.7kg」という数字を聞いて、「自分と同じくらいだ」と感じる男性もいるかもしれません。しかし、ファイターたちの56.7kgは、一般人のそれとは中身が全く異なります。
通常体重からの大幅な「水抜き」減量
UFCフライ級の選手の多くは、試合のない時期(オフ期間)には70kg前後の体重があることも珍しくありません。彼らは試合が決まると、脂肪を落とすダイエットを行い、計量直前に体内の水分を一時的に排出する「水抜き」を行います。
筋肉量が多いアスリートの体は多くの水分を含んでいるため、サウナや半身浴などで数キログラム分の水分を汗として出し、無理やりリミットの56.7kgに合わせます。これは生命の危険すら伴う過酷な作業であり、UFCファイターの精神力が試される最初の戦いとも言えます。
計量後のリカバリーで体重はどうなる?
前日の計量を56.7kgでパスした選手たちは、翌日の試合時には大きく体重を戻しています(リカバリー)。多くの選手が、試合当日のリング上では63kg〜68kg程度まで戻っていると言われています。
つまり、私たちが映像で見ている試合中の彼らは「フライ級」の体重ではなく、実質的にはフェザー級やライト級並みの体重で動いていることになります。この急激な増減量に耐えながら、5分間の激しい運動を続けるスタミナを作ることは、並大抵の努力ではありません。
計量失敗(体重超過)時のペナルティ
もし計量で体重をオーバーしてしまった場合、UFCでは厳しいペナルティが課されます。試合自体は相手が了承すれば行われることが多いですが(キャッチウェイト戦)、体重超過した選手はファイトマネーの20%〜30%を没収され、対戦相手に支払われます。
また、タイトルマッチで挑戦者が体重超過をした場合、勝っても王座を獲得することはできません。王者が超過した場合は、その時点で王座剥奪となるのが通例です。世界最高峰のリーグであるUFCにおいて、体重管理はプロとしての最低限の資質と見なされます。
UFCフライ級で活躍する日本人選手と世界の強豪

かつては「不人気階級」として廃止の噂すらあったUFCフライ級ですが、現在は世界中のテクニシャンが集う最激戦区となっています。そして今、この階級で日本人選手がかつてないほどの輝きを放っています。
平良達郎:無敗で世界を駆け上がる超新星
現在、日本の格闘技ファンから最も大きな期待を背負っているのが平良達郎(たいら たつろう)選手です。修斗王者としてUFCに参戦して以来、連勝を重ねてランキングを急上昇させています。
彼の強みは、現代MMAのトレンドを体現したような完成度の高いグラップリング(組み技)です。一度相手を捕まえれば逃さない制圧力は、世界トップランカーたちをも戦慄させています。平良選手はUFCフライ級において、日本人初のUFC王者誕生を現実的な目標として捉えさせてくれる存在です。
朝倉海:RIZIN王者からの電撃参戦
日本のRIZINでバンタム級王者として君臨していた朝倉海(あさくら かい)選手も、階級をフライ級に落としてUFCへの挑戦を決めました。
朝倉海選手の最大の武器は、一撃で相手を沈める強力な打撃(ストライキング)です。RIZINのバンタム級(61.0kg)からUFCフライ級(56.7kg)への階級変更は減量の負担が増えますが、その分、打撃の威力は相対的に増すと考えられます。彼のようなスター選手がいきなりタイトル戦線に絡むことで、日本のファンの熱量は最高潮に達しています。
過去の日本人挑戦者
過去には堀口恭司選手がUFCフライ級タイトルに挑戦しました。当時は絶対王者デメトリアス・ジョンソンに敗れましたが、試合終了間際まで粘る激闘を演じ、世界にその名を知らしめました。
絶対王者たちが築いた「神の階級」
UFCフライ級の歴史を語る上で外せないのが、初代王者デメトリアス・ジョンソン(通称DJ)です。彼は驚異の11回連続防衛という記録を打ち立て、「フライ級はDJが強すぎて面白くない」と言われるほどの完全無欠な強さを誇りました。
その後、ヘンリー・セフードやブランドン・モレノ、アレッシャンドリ・パントージャといった個性豊かな王者たちがベルトを争う戦国時代に突入しました。現在のUFCフライ級は、スピード、技術、スタミナの全てが揃っていなければ生き残れない、まさに「神々の階級」へと進化しています。
RIZINやONEとのフライ級体重の違い

格闘技ファンが混乱しやすいのが、団体ごとの「フライ級」の定義の違いです。特に日本のRIZINや、アジア最大のONE Championshipとは微妙に、あるいは大きく異なります。
RIZINフライ級(57.0kg)との微細な差
日本のRIZINにおけるフライ級のリミットは57.0kgです。UFCは56.7kgなので、その差はわずか300gです。
「たった300g」と思うかもしれませんが、減量末期の選手にとって、このペットボトル半分程度の重さは地獄のような苦しみを生みます。RIZINからUFCへ移籍する選手は、この「最後の300g」を削るために調整方法を厳密に見直す必要があります。
ONE Championshipの特殊な計量システム
最も注意が必要なのが、ONE Championship(ワン・チャンピオンシップ)との違いです。ONEでは過度な水抜き減量を禁止するため、尿比重検査(体内の水分量チェック)を行います。
そのため、ONEのフライ級は、選手が普段に近い健康的な状態で計量できるよう、リミットが61.2kg(135ポンド)に設定されています。これはUFCで言うところの「バンタム級」と同じ重さです。
【フライ級の団体別リミット比較】
| 団体名 | 規定体重 | 備考 |
|---|---|---|
| UFC | 56.7kg | 世界標準(ユニファイドルール) |
| RIZIN | 57.0kg | UFCより300g重い |
| ONE | 61.2kg | 水抜き禁止のため実質1階級上 |
団体を行き来する選手への影響
このように団体によって定義が異なるため、選手が移籍する際は「どの階級で戦うか」が大きな問題になります。例えば、元UFC王者のデメトリアス・ジョンソンがONEに移籍した際は、ONEのフライ級(61.2kg)で戦いました。
逆に、RIZINのバンタム級(61.0kg)で戦っていた朝倉海選手がUFCに行く場合、同じ61kg帯のバンタム級ではなく、体格差を考慮して56.7kgのフライ級を選びました。このように、数値上の体重だけでなく、選手の骨格や適正体重を見極めた階級選択が行われています。
なぜUFCフライ級は「神の階級」と呼ばれるのか

最後に、体重以外の面でこの階級が持つ魅力について触れておきましょう。なぜUFCフライ級は、玄人ファンからこれほどまでに愛されているのでしょうか。
軽量級ならではの圧倒的なスピードとスクランブル
フライ級最大の魅力は、他の階級では見られない圧倒的な「スピード」です。打撃のハンドスピードはもちろん、タックルに入ってからの攻防、寝技でのポジションの奪い合い(スクランブル)が目まぐるしく展開されます。
重量級が一発のKOで魅せるのに対し、フライ級は「止まらないアクション」で観客を魅了します。瞬きをしている間に攻守が入れ替わるような展開は、フライ級ならではの醍醐味です。
ハイレベルな技術の結晶
体が軽い分、フィジカルだけで誤魔化すことが難しいため、フライ級の選手は極めて高い技術(テクニック)を持っています。打撃、レスリング、柔術のすべてのレベルが高く、それらがシームレスに融合した「MMA(総合格闘技)の完成形」を見ることができます。
近年では、技術に加えてKOできるパワーを持った選手も増えており、「軽量級は判定が多い」という昔のイメージは払拭されつつあります。UFCフライ級の試合を見ることは、現代格闘技の最先端技術を目撃することと同義なのです。
まとめ:UFCフライ級の体重56.7kgを巡る戦い

UFCフライ級の体重規定や、その背景にある過酷な戦いについて解説してきました。要点を振り返ってみましょう。
- 体重リミット:基本は125ポンド(約56.7kg)。
- 1ポンド規定:ノンタイトル戦では約450gの超過(計57.15kgまで)が許されるが、タイトル戦は厳守。
- 過酷な減量:試合当日は大きくリカバリーしており、実際は60kg台半ばで戦っていることが多い。
- 日本人選手の活躍:平良達郎選手や朝倉海選手など、王座を狙える人材が揃っている。
- 他団体との違い:RIZINは57.0kg、ONEは61.2kgと、同じ「フライ級」でも定義が異なる。
「56.7kg」という数字の裏には、ファイターたちの並々ならぬ努力と戦略が隠されています。このギリギリの体重制限の中で、世界最高峰のスピードと技術がぶつかり合うUFCフライ級。
これからの日本人選手の活躍を応援する際も、計量のニュースや体重リカバリーといった視点を持つことで、試合の面白さがより一層深まるはずです。ぜひ、次回の大会では計量の結果から注目してみてください。



コメント