ボクシングやキックボクシングを始めると、避けて通れないのがグローブの「臭い」と「汚れ」の問題です。激しい練習でたっぷり汗を吸い込んだグローブは、放っておくと雑菌が繁殖して強い異臭を放つようになります。しかし、ボクシンググローブはデリケートな道具であり、衣類のように洗濯機で丸洗いすることはおすすめできません。
せっかく手に入れたお気に入りの相棒を、少しでも清潔に、そして長く使い続けたいと考えるのは当然のことです。そこでこの記事では、ボクシンググローブの洗い方の基本から、臭いを防ぐための日常的なメンテナンス方法、素材別のケアのコツまで詳しく解説します。初心者の方でも今日から実践できる簡単な方法ばかりですので、ぜひ参考にしてください。
グローブを適切にお手入れすることは、単に清潔さを保つだけでなく、拳を保護するクッションの寿命を延ばすことにもつながります。清潔な道具で、より気持ちよくトレーニングに打ち込める環境を整えていきましょう。
ボクシンググローブの洗い方の基本と洗濯機NGの理由

ボクシンググローブは、複雑な構造とデリケートな素材で作られています。まずは、なぜ一般的な「洗う」という行為がグローブにとって危険なのか、その基本的な考え方を確認しておきましょう。正しく理解することで、無理な洗浄による失敗を防ぐことができます。
なぜボクシンググローブは丸洗いができないのか
ボクシンググローブをバケツの水に浸してジャブジャブ洗いたいという気持ちは分かりますが、グローブの丸洗いは基本的に厳禁です。その最大の理由は、内部に詰められている「ウレタン」や「ラテックス」といったクッション材にあります。
これらの素材は一度大量の水分を含むと、非常に乾きにくいという性質を持っています。中まで完全に乾ききる前に雑菌が繁殖してしまい、洗う前よりも臭いがひどくなるケースが珍しくありません。また、水分を含んだまま放置されることでクッションが腐敗したり、弾力性が失われたりして、拳を守るという本来の機能が果たせなくなる恐れもあります。
さらに、グローブの外側に使われている革素材も、大量の水に浸されると硬化やひび割れを起こしやすくなります。ボクシンググローブにおける「洗う」とは、「表面を拭き上げ、内部の湿気を取り除く」ことだと考えてください。
洗濯機を使うと起こる致命的なダメージ
「洗濯機のソフトモードなら大丈夫だろう」と考えるのも危険です。洗濯機の回転や遠心力は、ボクシンググローブの型崩れを招く大きな原因となります。特にグローブの形状を維持している芯材が歪んでしまうと、二度と元の形には戻りません。
また、マジックテープ(面ファスナー)の部分が他の生地を傷つけたり、逆にマジックテープ自体にゴミが詰まって粘着力が弱まったりすることもあります。洗濯機での脱水は、クッション材を無理やり圧縮するため、内部の繊維を破壊してしまう可能性が高いのです。
さらに、合皮(PUレザー)製のグローブの場合、洗濯機の強い刺激によって表面のコーティングが剥がれてしまうこともあります。ボクシンググローブは「機械で洗うもの」ではなく、「手作業でケアするもの」と心得ておきましょう。
どうしても洗いたい場合の「水拭き」手順
汚れが目立つ場合や、どうしてもさっぱりさせたい時は、丸洗いではなく「固く絞った布での水拭き」を行いましょう。まず、清潔なタオルを水で濡らし、これ以上絞れないというところまでしっかり絞ります。水分が多すぎると革を傷めるため注意が必要です。
このタオルでグローブの外側を丁寧に拭き、付着した汗や相手の血、皮脂汚れなどを落としていきます。内側についても、指先の方まで指を差し込んで優しく拭き取ります。この際、中性洗剤を極めて薄めた水を使うと、汚れ落ちが良くなりますが、洗剤成分が残らないよう最後は真水で絞った布で仕上げてください。
拭き上げが終わったら、すぐに乾いたタオルで水分を吸い取ります。水気が残っている時間を最小限にすることが、革やクッションを長持ちさせるための重要なポイントです。
水拭きの際は、グローブの縫い目部分に水分が溜まらないよう意識してください。縫い目から内部へ水が浸入すると、中のクッションが湿気を吸い込んでしまいます。
汗や臭いを残さない!練習直後の正しいメンテナンス

ボクシンググローブの悪臭を防ぐために最も重要なのは、練習が終わった直後の初動対応です。汗が染み込んでから時間が経過するほど、菌が繁殖して臭いが定着してしまいます。ジムでの練習後、帰宅前に行うべきルーティンを確立しましょう。
練習が終わったらすぐに行うべき拭き上げ
練習が終わったら、まずはグローブの表面と内側の汗を拭き取ることが鉄則です。特にグローブの内部は汗が溜まりやすく、そのままバッグに放り込むのは禁物です。清潔なタオルや、除菌成分の入ったウェットティッシュを用意しておきましょう。
グローブの口を大きく広げ、奥の方までしっかりと拭き取ります。このとき、「湿り気を取る」という意識を持つことが大切です。練習直後のグローブは体温で温まっており、菌が最も増えやすい状態にあります。温度を下げ、水分を取り除くことで、繁殖を大幅に抑えることができます。
ジムの備え付けのタオルを使う場合は、柔軟剤などの成分が革に悪影響を及ぼさないか確認するか、自分専用のメンテナンス用クロスを持ち歩くのが理想的です。
バンテージを清潔に保つことが最大の予防策
グローブ自体の洗い方を考える前に、実は「バンテージ(拳に巻く布)」の扱いがグローブの清潔さに直結します。バンテージは手の汗を吸収し、グローブ内部に直接汗が触れるのを防ぐバリアの役割を果たしているからです。
毎回必ず洗濯済みの清潔なバンテージを使用してください。同じバンテージを数日間使い回すと、バンテージに付着した古い菌がグローブ内部に転移し、あっという間に強烈な臭いが発生します。バンテージは「下着」と同じだと考え、練習ごとに交換しましょう。
また、最近では軍手タイプ(簡易バンテージ)を使用する人も増えていますが、これも同様です。吸汗性の高いコットン素材のものを使い、こまめに洗濯することで、結果としてグローブを洗う頻度を減らし、清潔な状態を維持できます。
バンテージの洗濯には、ネットを使用することをおすすめします。そのまま洗濯機に入れると、長い布が他の衣類に絡まったり、マジックテープが生地を傷めたりするためです。
アルコール除菌スプレーの正しい使い方
拭き上げの後にアルコール除菌スプレーを使うのは非常に効果的です。ただし、使い方には注意が必要です。グローブの内部に直接シュッと吹きかけるのは良いですが、びしょびしょになるまでかけるのは逆効果です。
アルコールは揮発性が高いですが、大量に使うと乾くまでに時間がかかり、その間クッション材にダメージを与えることがあります。細かいミストが出るスプレーを使い、軽く2〜3回吹きかける程度に留めましょう。
また、革の表面(外側)にアルコールをつけるのは避けてください。アルコールは革の油分を奪ってしまうため、表面がカサカサになったり、ひび割れの原因になったりします。外側の除菌をしたい場合は、専用のクリーナーや低刺激な除菌シートを使用するのが安全です。
素材別のグローブお手入れ方法と注意点

ボクシンググローブには、大きく分けて「本革製」と「合皮(合成皮革)製」の2種類があります。それぞれ特性が異なるため、素材に合わせたお手入れを行うことが、グローブを寿命まで使い切るコツです。自分のグローブがどちらの素材か確認してから取り掛かりましょう。
本革(リアルレザー)グローブの保湿と手入れ
本革製のグローブは、使い込むほどに手に馴染み、耐久性も高いのが特徴です。しかし、生き物の皮を使っているため、水分や乾燥に非常に敏感です。練習後の水拭きを行った後は、時々「保湿」を行う必要があります。
革は汗(塩分)を吸い、乾燥を繰り返すと、次第に油分が抜けて硬くなっていきます。数ヶ月に一度、レザーコンディショナーやラナパーなどの革専用オイルを薄く塗り込みましょう。これにより、革に柔軟性が戻り、ひび割れを防ぐことができます。
オイルを塗りすぎると逆にベタつきの原因になり、汚れを吸着しやすくなるため、少量を布に取り、薄く広げるのがポイントです。手入れを終えた本革グローブは独特の光沢を放ち、愛着も一層深まるはずです。
合皮(PUレザー)グローブの汚れ落とし
初心者用や練習用として一般的な合皮製のグローブは、本革に比べて水に強く、扱いやすいのがメリットです。基本的には練習後の水拭きだけで十分清潔に保つことができます。
合皮の場合、汚れがひどい時は薄めた中性洗剤を含ませた布でゴシゴシ拭いても比較的ダメージが少ないです。ただし、合皮には「加水分解」という寿命があります。表面がポロポロと剥がれてきたら、それは寿命のサインであり、洗い方で解決することはできません。
合皮グローブを長持ちさせるには、とにかく「湿気を溜め込まないこと」に尽きます。本革のようなオイルケアは不要ですが、その分、通気性の確保には本革以上に気を配る必要があります。安価な分、気兼ねなく拭き掃除ができるのが合皮の強みと言えるでしょう。
中のクッション材を傷めないためのポイント
表面の素材が何であれ、グローブ内部のクッション材(パディング)のケアは共通して重要です。クッションがヘタってしまうと、拳への衝撃を吸収できなくなり、怪我の原因となります。
グローブを洗う、あるいは拭く際に、強く押し潰すように圧力をかけるのは避けてください。また、内部に消臭スプレー以外の液体(水など)を流し込むのも厳禁です。クッション材の細かい気泡の中に水分が入り込むと、構造が脆くなってしまいます。
練習中に拳を握り込む動作だけでもクッションには負荷がかかっています。練習後は、グローブの中に新聞紙を丸めて入れたり、専用の乾燥剤を入れたりして、物理的な衝撃を与えずに湿気だけを吸い出す工夫をしてください。
頑固な臭いを消し去るための消臭・除菌テクニック

「どんなに拭いても臭いが取れない」という状態になってしまった場合、通常の掃除だけでは不十分です。臭いの原因は、グローブの奥深くで繁殖した雑菌。これらを効率的に撃退するためのテクニックをご紹介します。
定番の消臭アイテム「グローブドッグ」の活用
ボクシンググローブ専用の消臭・乾燥アイテムとして知られるのが「グローブドッグ」です。これは布製の袋に杉のチップやシリカゲルなどの乾燥・消臭剤が詰まったもので、犬の骨のような形をしていることからその名がつきました。
使い方は簡単で、練習後のグローブの中に差し込んでおくだけです。杉のチップには天然の殺菌・消臭作用があり、湿気を吸い取りながら爽やかな香りを残してくれます。繰り返し使えるタイプが多く、非常に経済的です。
グローブドッグがない場合は、自作することも可能です。使い古した靴下に重曹や木炭を入れて口を縛れば、代用の消臭アイテムになります。ポイントは、「指先の方までしっかり届くサイズ」で作ることです。
重曹や新聞紙を使った身近な消臭テクニック
わざわざ専用の道具を買わなくても、家にあるもので強力な消臭が可能です。特におすすめなのが「重曹」です。重曹には酸性の臭い(汗の臭いなど)を中和する働きがあります。お茶パックに重曹を詰め、それをグローブの中に入れて一晩置くだけで、驚くほど臭いが軽減されます。
また、最も手軽で効果が高いのが「新聞紙」です。新聞紙のインクには消臭効果があり、紙自体も非常に吸湿性が高いです。新聞紙をふんわりと丸めてグローブの中に詰め込み、数時間おきに交換してみてください。
新聞紙を使う際は、あまりキツキツに詰めすぎないことがコツです。空気の通り道を少し残しておくことで、湿気が効率よく外へ逃げていきます。遠征先などで乾燥機が使えない時にも非常に役立つ知恵です。
既に臭くなってしまった時の最終手段
もしグローブから雑巾のような悪臭が漂い始めたら、通常のケアでは追いつきません。この場合の最終手段は、無水エタノールを染み込ませた布で、内側の生地を徹底的に除菌することです。水で希釈されていないエタノールは揮発が非常に早いため、クッションへのダメージを最小限に抑えつつ強力に殺菌できます。
また、市販の強力な消臭剤(ファブリーズのスポーツ用など)を併用するのも手ですが、これも「かけて終わり」ではなく、かけた後に扇風機の風を当てるなどして強制的に乾燥させることがセットです。
ただし、これらを試しても臭いが消えない場合は、クッション材の内部まで菌が浸食しています。不衛生なグローブを使い続けると、拳に湿疹ができたり、練習相手に不快な思いをさせたりすることになります。勇気を持って買い替えることも、スポーツマンとしてのマナーの一つです。
スチームクリーナーを使って熱殺菌を試みる人もいますが、熱に弱い革や接着剤を傷める可能性が高いため、あまりおすすめできません。
グローブを劣化させないための保管と乾燥のコツ

ボクシンググローブを洗うことと同じくらい大切なのが、その後の「乾燥」と「保管」です。どれだけ丁寧に汚れを拭き取っても、乾かし方を間違えると一日でグローブをダメにしてしまうこともあります。正しい乾燥のルールを覚えましょう。
湿気を逃がすための最適な保管場所
練習から帰ってきた後、グローブをバッグの中に入れっぱなしにしていませんか?バッグの中は湿気がこもり、菌にとって最高の繁殖場所です。帰宅したら必ずバッグから出し、「風通しの良い日陰」に保管してください。
グローブの口(手首の部分)をできるだけ大きく開き、立てかけて置くのが理想的です。棚の中に仕舞い込むのではなく、ワイヤーラックのような空気が四方から通る場所に置くことで、自然と湿気が抜けていきます。
また、保管場所の湿度にも注意しましょう。梅雨の時期などは、部屋全体の除湿機をかけるなどして、環境を整えることもグローブを長持ちさせる秘訣です。湿気は上から下に溜まる性質があるため、なるべく高い位置に保管するのも有効な手段です。
ドライヤーや天日干しがNGな理由
「早く乾かしたいから」といって、ドライヤーの熱風を当てたり、直射日光の下で天日干しをしたりするのは絶対にやめてください。革にとって、急激な温度変化と紫外線は天敵です。
熱風を当てると革の繊維が収縮し、カチカチに硬くなってしまいます。また、クッション材のウレタンも熱に弱く、ボロボロと崩れる原因になります。太陽の紫外線も同様に、素材の劣化を早め、色あせやひび割れを引き起こします。
乾燥を早めたい場合は、ドライヤーの「冷風」を使うか、扇風機の風を直接グローブの口に向かって当てるようにしましょう。風を送り込むことで、熱を加えずに効率よく内部の水分を飛ばすことができます。このひと手間で、乾燥スピードは劇的に上がります。
寿命を延ばすために揃えておきたいケア用品
ボクシンググローブのメンテナンスを習慣化するために、専用のケア用品をワンセット揃えておくことをおすすめします。これらがあるだけで、お手入れのハードルが下がり、グローブの状態を常に良好に保てます。
| アイテム名 | 用途 | 効果 |
|---|---|---|
| 除菌消臭スプレー | 練習直後の内側ケア | 雑菌の繁殖を抑え、臭いを予防する |
| マイクロファイバークロス | 表面・内側の拭き上げ | 傷をつけずに水分や汚れを吸収する |
| レザーコンディショナー | 本革の保湿 | 革に栄養を与え、ひび割れを防ぐ |
| グローブ乾燥機 | 強制乾燥 | ファンによる送風で内部までしっかり乾かす |
最近では、靴用の乾燥機を流用してグローブを乾かす人も多いです。タイマー付きのものを選べば、消し忘れの心配もなく便利です。ただし、この場合も「送風モード(温風なし)」がある機種を選ぶように注意してください。
ボクシンググローブの洗い方とお手入れに関するまとめ
ボクシンググローブは、日々の練習で最も酷使される道具の一つです。しかし、一般的な衣類とは異なり、洗濯機での丸洗いや水没は避けなければなりません。正しい洗い方の基本は、「練習直後のこまめな拭き上げ」と「徹底した湿気対策」に集約されます。
練習が終わったらすぐに表面と内側の汗を拭き取り、アルコールスプレーで除菌。帰宅後は風通しの良い日陰で、扇風機や乾燥剤を使って内部までしっかり乾かす。このシンプルなルーティンを繰り返すだけで、グローブの臭いは劇的に抑えられ、寿命を大幅に延ばすことができます。
また、バンテージを毎回清潔なものに交換することも、グローブを汚さないための非常に効果的な方法です。本革製であれば定期的なオイルケアを、合皮製であれば劣化に注意しながらの日々の清掃を心がけましょう。
道具を大切に扱うことは、自分自身の怪我を防ぎ、格闘技に対する真摯な姿勢を育むことにもつながります。清潔なグローブを手に、次回の練習も思い切り楽しんでいきましょう。





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